2015.06.04 Thursday
大地 〜 パール・バックに会いに鎮江へ行く1
CCTV(中国中央電視台)のトップニュースは、長江での、客船 “東方之星” 沈没事故。
全力での捜索、救命活動が続いております。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アメリカの作家パール・バック(中国名:賽珍珠[sài zhēn zhū] 1892−1973)。
代表作は『大地』。
1938年にノーベル文学賞を受賞(※注1)。
どや! すごいやろ、パール・バック。
どや、なのであるが実はわたし、知らなかった・・・。
『大地』もパール・バックも・・・。
どや! アホやろ、このわたし。
そのパール・バック(1892年6月生)は生後間もなく4か月のころ(※注2)宣教師の父母に連れられて中国に来た。そして、1896年の春から、アメリカの大学へ入学する前まで過ごした家(賽珍珠故居)が常州の隣町・鎮江にある。
鎮江は3月に一度訪れており、その時にパール・バックのことも知ったのだが、特に興味があったわけではないのでスルーした。
ところが、パール・バック、そして『大地』のことを調べてみると、これがまあすごい。
いろいろな人がブログで、パール・バック、そして『大地』のことを書いているのだが、『大地』に関しては、息もつがせぬ面白さとか、ご飯を食べるのも忘れるほど熱中したとかいずれも絶賛している。Amazonでの評価も高い。
日本に帰ってからの楽しみができた。日本に帰ったら、真っ先に神戸市立中央図書館へ行って『大地』を借りて読むのだ。
買えよ、っていう話だな。
さらに、わたしが驚いたのはパール・バックと『大地』について書かれたブログの記事の文章のレベルが高いこと。
うーむ、これが上質な文学の力(※注3)なのである。
文学、なんていい言葉だ。そして、パール・バックに出会ったわたしは、これからはお笑いで文章をごまかすことなく、真正面から格調高い文章を書くのだ。
これは、行かねば。鎮江にもう一度行って、若きパール・バックに会いに行くのだ。
そして、彼女の部屋に、彼女の寝室に忍び込むのだ。
賽珍珠故居は、鎮江駅から徒歩10分ぐらい。小さな丘の頂上にある。
鎮江駅(北広場のほう)を出たら、潤州山路をめざし中山西路を東へ進む。
徒歩約5分。そして、これが潤州山路。
大規模再開発中で、ゴーストタウン状態。写真に見える建物はほとんどどれも人は住んでいない。
この道をまっすぐ。
おお、標識が! 鎮江市第二中学はもうすぐだ。
ちがう、鎮江市第二中学はどうでもよくて(※注4)、目的地は賽珍珠故居である。
街路樹の手入れが悪いから、賽珍珠故居の文字が見えにくいぞ。
細い道は、やや急な坂になっている。車一台がやっと通れるこの細い道をまっすぐ進む。
写真を見ると、六甲山のふもと、六甲学院や松蔭女子学院がある辺りの閑静な住宅地を思わせるいい光景だ。
でも実は、この坂道の両側の建物はすべて廃墟。みごとに廃墟。怖いくらい。
わたし、廃墟好きである。ここに来た目的を忘れて、しばし廃墟見物と写真撮影に精を出す。
一人のストーカー(わたし)が坂を上りきる(たいした坂ではない)と、これから忍び込もうという、目的の彼女の家が姿を現した。おおおおおおっ!
しかし、開館時間注意。
賽珍珠故居と隣に賽珍珠記念館があるのだけど、昼休みが2時間もある。記念館に至っては3時間も! もっと働け。
到着したのがちょうど12時頃だったのだ。
ここは丘の頂上で、周囲は何もない。いや、トイレがあったので、用を足した。ドアがなく、溝があるだけのニーハオ・トイレ。
中国らしく、手入れの行き届いていない小さな公園もあるが、あとは廃墟に囲まれているだけ。
写真のアパートも廃墟で、手前にがれきの山があるのがわかるかな?
時間を守って正しく家に忍び込むストーカーというのは、ストーカーとして何か間違っているのだが、そういうことなので仕方がない。
しばし鎮江市内散策へ行って、出直すことにした。
≪次回へと続く(続かないかもしれない)≫
※注1: リンク先の南京ツアー・コンサルティングの記事もそうだが、女性として初めてノーベル文学賞を受賞、と紹介しているサイトもいくつかあるが誤り。女性初のノーベル文学賞受賞者は、スウェーデンのセルマ・ラーゲルレーヴである。検証せずに安易にコピペするからこういう誤りを犯す。
※注2: ウィキぺディアでは「生後3ヶ月で」中国に渡ったとある。ところが英語版 Wikipedia では「When Pearl was five months old」。百度(Baidu)の解説は「出生4个月后」。賽珍珠旧居でもらったパンフレットでは、中国語・英語でそれぞれ「四个月大」「four months old」とある。ここでは、パンフレットの記述に従った。
※注3: 話はそれるが、中国の良心をすべて集めたような映画『山の郵便配達』のamazonのレビューの文章も、それぞれレベルが高い。
あるレビュワーさんが「良い文章のレビューばかりで。ファン層の水準の高さにまた、驚きました。これもこの映画の力なのか。良いレビューを書かせてしまうのかな」と書いていたが、そういうことなのだろう。
※注4: 実はどうでもよくなくて、鎮江市第二中学はかつての名前を祟実女中といい、パール・バックが学び、そしてアメリカの大学を卒業後は英語教師をしていた学校である。
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