2013.03.31 Sunday
中国式建物の壊し方 〜 低層建築の場合
3月も今日で終り。
VISAの申請に必要な書類が届いてないので、まだKOBE(神戸)在住。
そうこうしているうちに、いや濰坊から戻って何もしてない間に春が来た。家の周りの街路樹の桜が咲いている。
濰坊も春は桜が咲いていた。それも結構あちこちに。
「桜の花を見たことがない」
こういう実習生は多い。身の回りで、あちこちに桜が咲いているのに。
実物の桜を指して「これが桜だ」と教えてもらったことがないのだ。
だから桜を見てもそれが桜であると認識されない。あるいは見過ごす、見落とす。
言語というものは、具体的な体験を通して確実な知識となる。
このことは人間の「認知」ということを考えるうえで、大変興味深く、ここで心理学・言語学・教育学・脳科学・認知科学などのわたしの持てる学識を披露して「学習における認知とは何か」ということを明らかにしてもよいのだが、きわめて専門的に高度な話になり、そんなムズカシイ話はやめてくれないかとみんな思うであろうから今回は勘弁してやろう。
今回はお庫出しネタ、濰坊残りネタで、中国式建物の壊し方。
これがもう荒い、荒い。爆弾テロに遭った建物、あるいはガス爆発をおこした建物みたいになる。
歩道にがんがんガレキをほっぽりだす。そして歩道をガレキだらけにしてしまうのだから。
この建物、1階部分は飲食店を中心とした店舗として使われ、2、3日前までどこも普通に営業していた。
それを突然壊し始めた(※注1)。
最後にガレキの山が築かれる。歩道側に崩れてきそうだ。
こういうのを見たときの日本人の反応は次の2つに大別できるだろう。
1.やはり中国は安全を軽視している。けしからんと思う
2.笑う
わたしは当然2の笑う。
架空インタビュー:工事を請け負う張さん(仮名)
「田舎じゃ仕事がないから、おら、濰坊さ出てきてこうやって働いているのさ。壊すだけなんだから、何も考えることはない。こうやってハンマーを振り回して壊すんだよ。えっ? 日本ではこういうときは通行人の安全のため、周囲を囲って、さらにガードマンを配置するって? いや、壊すだけなんだからそんな無駄な金つかえねぇよ。それに何でそんなことするんだ? 通行人だって馬鹿じゃないんだよ。取り壊し中の建物の近くを歩くときは気をつけて歩くだろう? なっ、そうだろ? 中国の安全はその場のお互いのあうんの暗黙の了解で成り立っているんだよ。交通マナーを見りゃわかるだろ?(※注2) 日本みたいに堅っ苦しいルールは無し。わっはは・・・。ただでさえ俺たち、堅っ苦しい●国●産●の●党●裁の国(自主検閲)に住んでるんだから安全のルールはこのくらいでいいんだよ。なっ、そうだろ? なっ?」
↑ 別の現場。どこもそうだが、やはり道路をガレキだらけにする。
こういう場合、日本では「工事中。ご迷惑をおかけしております」って頭を下げている看板が必ずおいてある。
中国の人は「そりゃ多少迷惑がかかるかも知れないけど、必要な仕事をやっているんだよ。悪いことやっているんじゃないのに何で頭を下げなけならないんだ」と考えているのかもしれない。
それもまた正しい気がする。
まぁだいたいが中国は国土がばかに広いから、周囲に気兼ねせずに、「おりゃー壊すぜ」っていう大陸的大らか大雑把なやり方が身体に染みついているのだろうな。
でも、時にはホントに危険なことがあって、Y先生は工事現場を通りかかったら、上からコンクリート片だったか金属片だったかが落ちてきたそうだ。
※注1: つい、2、3日前まで、いや、あるいはつい昨日まで普通に営業していた店を突然壊しだす。こういうのはよく見かけることで驚くにあたらない(いや、ホントは驚くけど)。
わたしが驚くのは、ギリギリまでそこにとどまり営業する、あるいは住み続けること(解体中のアパートにすら人が住んでいるんだから)。
そして壊す直前にに必要なものを迅速に運び出す逃げ足の速さである。だから、本来北京の紫禁城の宝物が台北の故宮博物院にたくさんある。あれは国民党が台湾に逃げたとき一緒に台湾へ持って行ったのだ。
「すわ! 一大事」という時にあっという間に宝物をまとめあげて逃げるというのは、有史以来、革命(易姓革命)が続く中国のお家芸らしい。
※注2: 『おどろきの中国』(橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司 講談社現代新書)の第1部「中国とはそもそも何か」の“4 中国的生存戦略の起源”に詳しい。
2013.03.26 Tuesday
中国の海賊盤CD 〜 U2ベストのはずがワーストだった
中国は、CD、DVDは海賊盤だらけというのは有名だけど、実際に中国の海賊盤って見たことないでしょ?
CDショップや、スーパーで売られている海賊盤CDのパッケージと中身は、ほとんどこうなっているという話である。
以下、写真は濰坊で初めて買ったCD。U2のベスト盤である。3枚組で25元(1元=約13円)だった。
見た目が豪華な上に安いので買ってみたのである。
↑ 表紙。写真では文字がつぶれているが、左下に日本語で「24K ゼロ衰減の高透過率材料」とある。高音質をうたうのは中国の海賊盤のお約束である。
これが、とてもぶ厚い。上から見ると・・・
豪華な感じだ。開いてみると・・・
国内盤や輸入盤でときどき見かける薄いデジパック仕様に比べて、中国の海賊盤のこの重厚感はどうだという感じである。
さすがメンツの国。
で、中身は・・・
なんじゃい。なんじゃいこりゃ(松田優作)。
適当な紙袋に入ったCD3枚と、これまた適当な、全曲掲載でなく一部の曲だけの歌詞カードのみ。
極厚の見開きパッケージは、閉じたときの留め具がないのでつねにパカパカ状態。
しかも、この歌詞カードの裏面はU2とは全く無関係の中国の仏教音楽のCDの解説書が印刷されていた。
U2の音楽と中国の仏教の間に、われわれ日本人には理解できない深い関係を中国人は感じているのだろうかと、つい深読み・・・するわけなくて、あまりの手抜きぶりに、普段は仏のような心の持ち主の私に「なんじゃいこれは」と、思いがけず松田優作が降霊した。
選曲も筋の通ったコンセプトがなくてずいぶん適当で、U2(ゆーつー)だけに憂鬱(ゆーうつ)になって、このCDは1枚目を1回聴いただけで、日本に帰るとき部屋に残してきた。
U2ならほとんど持ってるし、こんなのいらない。
そういえば、ビートルズのベスト盤の表紙の写真がラトルズというのもあった。
海賊盤・ビートルズ。その表紙の写真がパロディー・バンド。深読みすればするほど深いのであるが、そんな深い意味はなくて、ただのミスであることは明らかである。
中国の人の中には、ビートルズとラトルズが区別できないくらい西洋人の顔がみな同じに見える人がいまだに存在するということか。
中国の海賊盤はメンツにかけてパッケージは重厚・豪華。3枚組というお得感。さらに「ドイツの技術を使った」だの「高品質な材料を使った」だのと高音質をうたい高級感を演出するが、中身は手抜き。
海賊盤CDは表面的なメンツ(見た目の豪華さ)にこだわる中国の縮図であるとも言えるのかも・・・そう考えると深いんだか、なんだか。
なお、ここで紹介した海賊盤は、CDショップやスーパーで売られているマトモな海賊盤である。
パッケージだけを見ると、豪華永久保存盤仕様。最新技術による高音質(眉唾ものだけど)なのである。
露店ではジャケットなしの薄いプラケースに入っただけの粗末な海賊盤を売っている。買ったことないから(中国の個人商店は値段を表示してないことが多い)値段は不明。
CDとは直接関係ないけど、濰坊の街を歩いていて一番よく流れていた日本の楽曲は、初音ミクのロイツマ「Ievan Polkka」である。
解説: CDショップやスーパーで売られている海賊盤CDはほとんどが、3枚組でこんな作りである。
海賊盤率はスーパーが100%、CDショップが95%超えぐらい。もちろん、テスコ(イギリス)、ウォルマート(アメリカ)、ジャスコ(現イオン)といった外資系スーパーも100%海賊盤である。これはDVDも同様。
アーメイ(張恵美)のファンサイトでは、アーティストを苦しめる海賊盤を買わないでくださいという呼びかけをしているけど、道徳的には正しいけど現実的じゃない。中国じゃあ海賊盤しか売ってないことがほとんどなんだから。有名なフェイ・ウォン(ウィキペディアの写真が山田花子かと思った)ですら、正規盤は1枚も見かけなかった。
なお、アーメイの正規盤は濰坊で一番大きなCDショップで数枚の在庫のほか、KIGOという書店のCDコーナーで2、3枚の在庫を確認している。
だいたい、中国は正規盤がすぐ廃盤になる。ひょっとしたら、ほとんどが初回プレス分で終了ではないのかとも思う。そしてその穴を海賊盤が埋める。
中国は、楽曲や演奏・歌はレコード会社の買い取りで、CDの売り上げに応じた収入がアーティストに入ってくるといった著作権ビジネスが成立していないのだろう。つまり、労働に対しては金を払うけど、労働してなければ当然金を払うことはないと考えている?
上記のU2のベスト盤にしても、「選曲してジャケットデザイン考えて、製造・出版しているのは我々中国の会社であり、この件に際してU2は何も労働してないじゃないか。何でU2に金払わないといけないのだ」ということかも知れない。
自由経済が根付いているとはいえ、社会主義・中国の人にとって、CDが売れている間は、何もしてなくても自動的に金が入るというシステムがまだよく理解できていないのではないかとも思う。
こういう考え方を当のアーティストを含めて多くの中国人民が共有している? じゃないと、アーティストがこんな状況に対し黙っているはずがない。
そもそも、海賊盤などと言っているが、それは欧米人や日本人の常識からそう思っているわけで、中国の人は、これらが、売れてもアーティストには一銭の金も入らない海賊盤であると考えていないのではないか。中国の常識では、ひょっとしたらこれも正規盤なのではないのか。
お馴染みの、All rights of manufacturerから始まる英文の著作権に関する注意書きも書かれているし、山東文化音像出版社とか、中国科学文化音像出版社とか、どれも会社名を見るとマトモそうな感じの会社から出されている。
欧米のロックの世界でも悪徳マネージャー(ジョルジオ・ゴメルスキーという人の悪行ぶりは有名)に騙されて、あるいは契約がこじれてレコード、CDが売れてもアーティスト側には一銭の金も入ってこないということは珍しいことではない。
値段はたいてい28元。バーゲンセールになると10元。正規盤の値段は、日本のような再販価格制度がないのでいろいろなのだけど、ニューアルバムは1枚60元以上。
3枚組の中身(楽曲)は、適当な写真を使ったパッケージのものは過去の楽曲の寄せ集め。
パッケージが正規盤の写真を流用したものは、1枚がその正規盤と同じ内容で、他の2枚は過去の楽曲のコンピというパターンが多い。
コストパフォーマンスの高さから言って、正規盤買おうとは思わないよな、こりゃ。
わたしは、U2で海賊盤CD事情が分かって懲りたので海賊盤CDは買わないようにした。
と言いつつ、崔健(ツイジェン)(2枚組、15元)やサー・ディンディン(薩頂頂)(3枚組、10元)なんかを買ったけど。パッケージはU2同様に分厚くて立派だよ。
2013.03.16 Saturday
中国人実習生 〜 広島の彼のこと
彼は、はたして「実習生」なのだろうか、「研修生」なのだろうか?
朝日新聞は「実習生」。局はわからないがテレビを見ると「研修生」の用語が使われていた。
ウィキペディアから引用すると、「2010年7月1日に出入国管理及び難民認定法 が改正され、生産活動などの実務が伴う技能習得活動は技能実習制度に一本化された」わけであり、実習生という用語を使うのが適切である。
「ただし、在留資格としての“研修”は廃止されず、座学など実務が伴わない形での技能習得のみが認められる資格として存続する」わけであるから、工場などで働きながら技能の取得を目指す場合はやはり実習生でなくてはならない。
カキ加工場で働いていた彼は「研修生」ではなく「実習生」である。
マスコミが用語を誤る。
この一件でも、外国人実習生の実態が世間一般に知られていないことがよく分かる。
日本での実習希望者はまず、日本の企業に採用されることが先である。たいてい日本から企業や組合の人がやってきて面接するのだが、書類審査だけで採用を決定する会社もある。
大丈夫か? 他人事ながら心配になる。
採用が決定した実習候補生が培訓中心(訓練センター)に入学して寮に入り約4か月、日本語を中心に日本の文化・習慣を学習する。
日本に行ったら最初の1か月は日本語と生活・習慣についての研修を受ける。
彼は「礼儀正しく、仕事場やスーパーなどで会っても“お姉さん方、おはようございます”と、腰を折って深く頭を下げてあいさつしてくれた」(朝日新聞・夕刊)そうだから、培訓中心でかなり礼儀作法をたたきこまれたことがわかる。中国は「腰を折って深く頭を下げ」るようなあいさつの作法はない。
呼びかけに「お姉さん方」というのは不自然な日本語だし、お辞儀の仕方も馬鹿ていねいさが抜けてないのは、彼が通った培訓中心には日本人の教師がいなかったのかもしれない。
中国人教師から、日本人は礼儀正しいから必ず腰を折って深く頭を下げてあいさつをしなさいと、教え込まれたのだろう。
わたしがいた培訓中心の実習生は、山東省の田舎の出である。家族、両親と一緒に暮し、両親はたいてい農地を持っている。工場などで働きながら。2000元くらいの給料をもらい、自分の農地で取れたトウモロコシや麦を主食にしてつつましく暮らしているというのが日本へ行く前の実習生たちの平均的な姿である。
ほとんどの実習生が、日本へ行く志望動機に「日本へ行って、お金を稼いで生活を豊かにしたい」と答えている。
「技能を高め、指導的な立場で祖国の技術の発展に寄与したい」などといった回答は見たことがない。
わたしが見た彼ら・彼女らの印象は一言で言えば「素朴」である。
山東省以外に出たことがない子もたくさんいる。列車に乗ったことがないという子もいる。
日本に行くことができるというのは彼ら・彼女にとって、あえて露骨な表現をすれば、金がすべての、夢であり未来の希望である。
We're Only in it for the Money(フランク・ザッパ)。
わたしの夢がかないますと、彼ら彼女らはみな言う。
富士山と桜を見たいですとも言う。
そんな夢と希望、家族の期待で胸いっぱいにして、彼ら、彼女らは日本へと出発していく。
わたしがいた、培訓中心の実習生が住む寮の環境は劣悪だった。
いかにも社会主義中国といった昔ながらの古いアパート、つまりは一般庶民の住むアパート(※注1)を借りて寮としているのだが、ここに10数人を詰め込む。
暖房や冷房も冷蔵庫も洗濯機もテレビもない。10数人の実習生に対しトイレ・シャワーは1つだけである。
濰坊は夏は暑く冬は寒い。夏場などは暑さで夜寝れなくて、みなぐったりしていた。
日本ならあまりの環境の劣悪さに裁判沙汰だろう。
台所も油まみれの不潔さ。
そして、日曜日を除き、自習を含めて朝は7時半から夜9時まで培訓中心で毎日勉強する。
お金がないものだから生活は質素を極めている。「肉は高いから買いません」と言い、毎日マントウと1品か2品のおかずで腹を満たしている。
寮生活の間、たいていの実習生は自然とダイエットできてしまい体重が減少するというメリットもある。まれに太る実習生がいるが、これもストレスで過食気味になっているのかもしれないので笑えない。
でも、そうやって頑張る彼ら彼女らの姿はたまらなく愛おしい。
彼ら、彼女たちは日本に行ってどんな職場で働くのだろう。
わたしはいつも、彼ら、彼女らがが働く会社をインターネットで調べていた。
従業員10人以下という会社も多い。日本人は社長と、事務・経理の奥さんのみであとはみな外国人実習生という会社もある。
日本の若い人が就職したがらない、地味で根気のいる仕事。しかも都会から離れた不便な地方の会社。
彼ら彼女らが赴任するところは、ほとんどがこんな会社だ。
あるベビー用品専業の会社のHPには、「生地作りから全て日本国内で行っています。生まれてすぐに着る肌着は安心・安全な日本製の肌着を」とあった。
確かに国内生産だろうが、国内生産を底辺で支えているのは中国人実習生であることは消費者には分からない。
中国人実習生が日本にやってくるのが金のためなら、日本の会社が中国人実習生を雇うのも金(人件費削減)のため。
ためしに「外国人実習生 人件費」と入力して検索してみるとよい。日本の会社が、国際貢献と国際協力の一環といった崇高な理念とは全く関係なく安価な労働力として実習生を利用している(※注2)ことがよく分かる。
日本へ行った、彼ら彼女から電話を貰う。
「日本人は優しいです」「親切です」。
これが、わたしが実習生からいちばん聞きたい言葉だ。
夢をいっぱい持って日本に行った彼ら彼女らが、日本人の心ない言葉や態度によって失望に変わってしまうとしたら、あまりにもお互いのために不幸だと思う。
彼ら彼女らが生まれ育った環境とはまるで違う日本。
よきにつけ、悪しきにつけカルチャーショックは大きいはずだ。
そんな彼ら彼女の心を救うものは周囲との良好な人間関係しかない。
わたしも単身中国の、しかもほとんど日本人のいない、地方の会社で働いていたわけだから、これは他人ごとではなく自分の身に引き寄せて理解できる。
日本へ行って、失踪してしまう子がいる。
わたしが教えた実習生にも日本へ行って失踪した子が複数いる。
これが、九州のとある食品加工会社に集中している。送り込んだ実習生が次々失踪する。高級なハムやソーセージを製造しており、神戸や東京のデパートにも出店している。
ここは、実習生たちを賃金の安い労働力としか見ていないようで、実習生たちは社内で差別的な扱いを受けているといったたぐいの噂、実習生の不満をよく聞いた。
社長らの態度が高飛車。この会社には実習生を送りたくないとY先生も言っていた。
さて、朝日新聞の夕刊によると彼は「社長との関係に悩んでいた」「毎日怒られ、馬鹿にされている」と言っているらしい。
このカキ加工場の社長は「厳しい一面もあった」。「温和な性格」という知人の男性の声もある。
ふつうに考えて、自分の仕事に誇りを持っている人ならだれでも「厳しい一面」を持ち合わせているだろうと思う。ましてや社長なのだからいっそうそうであろう。
であれば、社長が彼に取った態度は日本のどこの会社にでもあることだったのかもしれない。
彼は、日本語が不自由で周囲から孤立していたらしい。
妻子を本国に残し単身でやってきた彼。
作業場の上で暮らしていたということだから、心が解放されることはなかったろう。
わたし、外国人実習生に対するメンタル・ケアというものが非常に手薄ではないかと以前から気にかかっていた。
仕事面で日本人従業員と同様の働きを期待し、叱責する社長。
日本人と中国人では仕事に向かう姿勢が全く違う。
一言で言えば、日本人は会社のために働くが、中国人は信頼を寄せる上司のために働く。彼と社長の間に信頼関係がなかったことは明らかだ
さらに面子を重視し人前で怒られることを非常に嫌う中国人の国民性。
心と心だけでなく、文化と文化もぶつかり合う。
朝日新聞・夕刊の記事中にある外国人実習生がおこした殺人事件の犯人は、みな中国人実習生。
なぜ?
わたしが思うに、中国が開放改革により外国との交流が当たり前になってまだ30年ほど。つまり、フィリピンやタイ、韓国の人に比べ、中国の一般の人は、異文化に対する適応能力が他国に比べかなり低いのではないか。
実習生の出身地は、ほとんど外国人を見かけることのない田舎であることが多い。
そこで異文化と個人が決定的に衝突したときの対処法が悲劇的な方向にむかってしまう。これが理由のひとつではないか。
もう一つは、なんといっても他国に比べ中国人実習生の数が多いというのも関係あるだろう。
チャイナリスクとやらで、最近日本の会社は中国ではなくタイ人実習生へとシフトしてきているらしい。
中国に対するバッシングや偏見がますます広がりそうな気がする。
ところで、「3年間の実習を終え、だいたいいくらぐらいお金を持って中国へ帰るの?」と中国人先生に聞いたことがある。
答えは、300万円ぐらいということだった。
1年あたり100万円、約8万元
1か月あたり8万3333円、約6666.6元だから、彼らにとって中国の3か月分以上の給料の額が1か月で貯金できるわけである。
彼ら彼女らは、10万から15万円くらいの給料で、徹底した節約生活をしながら金をため中国へ帰る。
※注1:日本でいえば市営団地を想像してもらうと良い。社会主義政策で個人の持ち家というのが認められていないため(土地もそうだけど使用権はあるが所有権はない)、都市部の住民の多くが公営のアパートに住む。日本の場合、老朽化した木造住宅の密集地(かなり言葉に気をつけているのだけど、分かるかな?)の再開発は住宅を壊しそこに低額所得者向けの公営の団地を建てる。中国の町の風景は、この、再開発された公営団地群の光景に似ている。
※注2:記事中の残業代が時給300円というのは、過去にかなり問題になった出来事だ。実習生が日本の事情に疎いことを悪用してこういう契約を結んだりする会社があった。リンク先の記事は2008年と、出入国管理及び難民認定法 の改正前のものなので、現在は改善されているはずである。ちなみに濰坊のケンタッキー・フライドチキンのアルバイトの時給は8元から10元くらい、つまり日本円にして100円位らしい。純朴な実習生は時給300円なら中国の3倍もらえると思ってしまうわけだ。
2013.03.09 Saturday
Young Persons Guide To 外国人体格検査
中国再上陸のためVISAを取り直さなくてはいけない。
そのためには健康診断を受けなくてはいけないのだが、これが慣れないとちょっと面倒。
きのうは、2度目の中国ビザ申請のための健康診断に行ってきたので、迷える子羊のためにわたしが簡単に外国人体格検査の受け方をガイドしよう。
まず、受診する病院は国公立病院か赤十字病院、あるいは日中友好医院(東京)のような中国政府と強いパイプのある病院じゃないといけない。
じゃあ近くに市立病院があるから、そこでいいやと思ってはいけない。
健康診断(外国人体格検査)は中国政府指定の用紙(外国人体格検査記録)があり、その書式に沿って、中国政府の指定する検査をもれなく受診しなければならない。
というわけで、慣れてない病院だと、必要な検診項目は何なのだとか、書き方がよく分からんとかいうことがあって不備な書類となってしまう恐れがある。
わたしは明石市立市民病院で受診した。ここは予約いらずで、外国人体格検査記録の書き方も慣れている。
病院の人は「中国健診」と呼んでいた。
健康診断を受けるにあたっては、外国人体格検査記録用紙を入手し、必要事項を記入し写真を張り付けて持参する。
外国人体格検査記録用紙は日中友好医院のようなところは病院に用意しているようだが、一般の国公立病院には用意されてない。
さて、外国人体格検査記録用紙は、大使館のHPからダウンロードする。
これが、今回は困った。というのは中華人民共和国外交部のページはリンク切れになっていたり、大使館のHPから各種申請書ダウンロードへ行っても外国人体格検査記録が見当たらない。
どういうことなのだ!?
外国人体格検査、外国人体格・・・・・・・、と探していると英語でPHYSICAL EXMINATION RECORD FOR FOREIGNERとあった。
中国語、つまりは漢字で外国人体格検査記録というのを探していたのだ。
PHYSICAL EXMINATION RECORD FOR FOREIGNER。英語かよ。
必要事項の記入例は、ここをどうぞ。雛形がある。
さて、今回の検診はなぜか尿検査なし。前回は、結果をもらうのに4日ほどかかったのに今回はその日のうちに結果が出て、すべて記入された外国人体格検査記録を受け取ることができた。
そのかわり、最後の問診の前に30分以上待たされたけど。
所要時間約2時間で2万5千円でお釣りの来る料金だった。
料金は前回とほとんど変わっていない。
中国の会社に就職する場合、健康診断料は自腹であることが多い。
そうだよな、受診料が中国人サラリーマンの1か月分の給与並みなんだから。
あるHPでは3万円以上取られたという報告もあるので、料金については気を付けたい。
この外国人体格検査記録を、スキャナで画像データにして中国の会社にメールで送るのである。
この外国人体格検査記録は中国に送られた後、中国でもう一枚作成されるようで、前回はそれを見るとなぜか医師の名前が中国人医師の名前になっており、病院も濰坊の病院に書き換えられていた。
私文書偽造という言葉が頭によぎったりしてよく分からないのであるが、中国ではそういうことなのである。
健康診断は中国に行っても再び受けないといけなかったのだが(保険のため?)、採血の後に綿棒を渡された。えっ、なに?。
これで採血したところ、針を刺したところを押さえておくのだ。
日本のようにバンソウコウじゃないのね。
さて、診断結果は両目とも裸眼視力が0.1なかったのがちょっとショックだけど、心電図、血液検査もすべて異常なしだったので良しとする。
Young Persons Guide To 外国人体格検査というのは、
はい、The Young Persons' Guide To King Crimson。
中国で、キング・クリムゾンは全く無名。
プログレのCDはピンク・フロイド以外全然見かけなかった。
濰坊で見かけたピンク・フロイドのCDは、「狂気」の(たぶん)正規盤1枚と、(正規盤っぽく見せてあるがたぶん)海賊盤「ザ・ウォール」が1枚(正確には2枚組)の計2枚のみ。
2枚とも当然すでに持っているが、中国製のピンク・フロイド。
これは買わねば、というわけでわたしが買ったので、今濰坊にプログレのCDも、ピンク・フロイドのCDも1枚もない(筈である)。
2013.03.07 Thursday
我想去中国 〜 侃侃 “滴答”
これらの曲を聞くと、中国へ行きたいと思う。
◆ 菅野よう子「中国〜12億人の改革開放」のメインテーマ
この曲のみリンクはYoutube。中国ではYoutubeは遮断されて見ることができなかった。今の中国の発展は、このメインテーマのスピード感あふれる演奏さながらである。わたし、実は菅野よう子とは同級生だった(←ちょっとだけ自慢)。
'94年〜'95年って中国の人口は12億人だったのだな。今中国の人口は13億だから、日本の人口と同じくらいの人間が増えたことになる。
しかし、わたしはこの番組を見たという記憶がないのだけれども、初めて開放改革後の経済特区の発展ぶりをNHKの番組で見て驚いたのは鮮明に覚えている。この番組だったのだろうか?
◆ 汪峰「飞(飛)得更高」
この曲は以前にもリンクした(8月25日付のエントリー)。汪峰はこの曲と「怒放的生命」を、町でホントよく耳にしたな。
◆ 侃侃 「滴答」
侃侃はカンカン(kankan)と読む。日本の漢字とほとんど同じ読みである。『北京愛情故事』というドラマの主題曲。
ダディダディダディダー♪ というフレーズは一回耳にしただけで一緒に歌えてしまう。滴答は時計のカチカチ。擬音語である。中国人S先生は携帯電話の着メロにしていた。
この曲も町を歩いているときホントよく耳にした。一番よく耳にしたのではないかとも思う。だから、タイトルに使ったのである。CD「時光倒流」と「老家」の海賊盤もよく目にした。油断も隙もあったものじゃないのだがリンク先の「老家」も海賊盤。これは2枚組だけど、中国の海賊盤は曲をいっぱい詰め込んで3枚組というのが多い。
本物はこっちである。
べつに中国行かなくても、日本で聞けるじゃないかという話だけど
これらの曲を聴くと町の風景がリアルに思い浮かんでくる。
我想去中国(wo xiang qu zhong guo) 。わたしは中国へ行きたいです。「去」より今は「回来」のほうが適切なのかな。
なお、リンク先の优酷(youku)というサイトは著作権に関しては無法地帯というのかパラダイスというのか、ここをどこだと思っているのだ、中国なんだぞ状態。
Youtubeは著作権に配慮してアップできる時間制限があるが、优酷は時間制限なし。日本の映画もアニメも、ノーカットでフルに見れてしまう。
ためしに検索してみるとよい。検索は日本語でOK。
インターネットに関して、政治の事情というか、まあいろいろ大人の事情があって、あっちは自由にできないかわりに、こっちのほうは自由にしてやろうという、人民を思う有難い党指導部の配慮があるのだと思う。
為人民服務(为人民服务)だもんな。
ちなみにわたしのSkypeのプロフィールの画像には「為美女服務」というパロディーを使わせてもらっている。
2013.03.05 Tuesday
Go! Go! シンセン 〜 中国再上陸計画始動
いやー、人間何がつらいかって、仕事がないというのは非常につらい。
だいたい人間暇だと何もしない。
ビジネスだって「仕事は忙しい人に頼め」というのが常識である。
暇があるとブログの更新もする気がしない。
もっとも、日本にいるとどうも面白いネタというかギャグというか笑いが思いつかないので更新してなかったのだけど。
濰坊から帰って職探しの低空飛行な日々を送っていたが、一応、深圳の学校から採用決定の通知をもらって、中国再上陸の予定で始動を開始。
深圳は中国(大陸)で一番初めに経済特区となって、あっという間に大都市に発展した町。というのは、誰でも知っている。
で、ここは実際に生活するとどんな所なのかというと・・・・・
(検索中)・・・・・・・・おおっ・・・・・・・・・・おお、・・・おおっ・・・・・数が多すぎて読み切れない・・・・。
この数は北京や上海並ではないのか。うーむ、さすが深圳。
香港まですぐに行けてしまうというのは嬉しい。
濰坊はほとんど日本語の情報が無かった。
おかげでずいぶん中国生活は鍛えられた。
周囲に日本人がいなくても、日本人(外国人)相手の店が一軒もなくても平気だぞ。
片言の中国語(※注)で必要なことはだいたいできてしまうぞ。
ワイルドだろー。
だいたいこの学校は中国語教室もやっており、日本人も通っているのだ。
日本人がいっぱいの中国って、逆に不安になるな。
中国語をちょっと本格的に鍛えようと思っているのだけど、そんな環境で中国語覚えられるのかなって?
以上今回は、ただの近況報告である。
しかし、中国が楽しいっていうのは我ながら変わっていると思う。
たしかに、愛想が悪いだのということはあるんだけど、中国の人ってみなツンデレという感じで、表面的には愛想がないけど、実際は結構人懐っこいという、人との距離の取り方がわたしは結構心地よかったのだ。
濰坊は地方都市だから、人が素朴でそうだったのかもしれないけど。
※注: ちょっと面倒になったらすぐ筆談。会話は、ちゃんと主語述語の整った成文ではなく単語レベルでしか会話はできない。じつは片言どころか全然なのである。
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