2015.02.14 Saturday
韓寒とは誰か ?共和国とは何か? 〜 中国的書店事情
中国は漢字を発明した偉大な国である。
紀元前から漢字を使ってさまざまな記録を今に残してきた。
というわけで中国は文字の国、すなわち書物の国であり本屋(書店、中国語は 书店 shūdiàn)はたくさんあるのだろうと思っていた。
わたしは外国であっても書店(それとCDショップね)を見つけると必ず中に入る人なのであるが、中国は書店がとても少ない。
どのくらい少ないかというと例えば常州。まず下の地図を見てもらいたい。
わたしの住んでいるところだ。ここは「大学城」と名付けられた常州の一大キャンパスシティである。「大学」のほか「学院」の文字がいくつか確認できるだろう。
ところがこの大学城は一軒も、ホントに一軒も書店がない。
もっと範囲を大学城のある武進区にまで広げても、いまだ一軒も書店を発見してない。
漢字というのは習得するのが大変で、漢字を読み書きするというのはかつては一部の階級だけの特権だった。
そんなわけで、つい最近まで中国の文盲率はけっこう高かった。日本のように読書が庶民の娯楽というわけにはいかなかったのだ。
それも中国に書店が少ない原因かなと思う。
常州最大の繁華街・南大街(ナンダージエ)に行くと大きな本屋(新華書店)がある。
久住昌之『孤独のグルメ』を発見。中国語題『孤独的美食家』。
思わず買う。32.8元(1元は約19円)。
中国語読めるのかって?
中国語なんて漢文の要領で読めるんだよ。
それにこれ日本の漫画だから、わからない単語があっても絵の助けもあってちゃんと読める。
というのは半分強がりの嘘で、半分は事実である。
韓寒(※注1)のコーナーを発見。『1988』もある。
『1988 : 我想和這個世界談談(ぼくはこの世界と話したい)』はNHKの中国語講座『レベルアップ中国語』のテキストに前半部分だけが取り上げられていた。そう、わたしはこの続きを読みたかったのだ。拾い読みを試みたが私の中国語力ではすぐ挫折。
↑ 雑誌の表紙の「公民」韓寒。もちろん皮肉たっぷりの写真である(と思う)
韓寒は中国で今最も人気のある作家の一人である。
現代中国の最も良質な知性であると思う。
それにくやしいが、わたしより少しばかりイケメンであることも認めねばならない。
↑ わたしよりほんの少しだけイケメンな韓寒。男は外見ではない
日本で紹介されたことがあるのか調べてみてずっこける(←死語)。
↑ ずっこける(参考写真。本文とは一切関係ありません)
日本で紹介(出版)された著作は1冊だけ。
『上海ビート』。ん? 何だこの日本語タイトル。明らかな『上海ベイビー』(衛慧著)のパクリ。原題は『三重門』である。(※注2)
こんなひどい日本語題をつける出版社ってどこだ?
サンマーク出版。
あのサンマーク出版。
なぜに韓寒がサンマーク出版。
トンデモ本の総本山と言われるサンマーク出版。
まともな読者家なら絶対手を出さないサンマーク出版。
「もし自分の本棚に団鬼六かサンマーク出版の本を並べろと言われたらどっちが人に見られて恥ずかしいですか」と人に問われたら(←誰もそんな質問しない)、わたしは迷わず「サンマーク出版のほうが恥ずかしい」と答える。
↑ 団鬼六(SM)参考写真
そのせいか、amazonのレビューは0件。現在絶版。
稲盛和夫の本は中国でもよく目にするし、ベストセラーも多くて『脳内革命』も中国で出版されているし、そんなことからサンマーク出版の実体をよく知らない韓寒は、この出版社なら大丈夫などと勘違いしたのかもしれない。
だとしたら、「気の毒」としか言いようがない。
現代中国の最高の知性に触れたいというステキな人(お友達になれそうですね)はできれば、NHKの中国語講座『レベルアップ中国語』2014年3月号あるいは2014年9月号(再放送)のテキストを探して読んでくれたし。
あるいは、「韓寒 ブログ」で検索すれば、いくつかのサイトで韓寒のブログの日本語訳を読むことができる。
ここから最初の漢字の話に戻ろうと思う。
現代の日本語というのは、日本語本来の言葉(「大和ことば」という)の上にどかんと大量の漢語がのっかり、さらにその上にこれも大量の外来語がプラスされてできている。
漢語というのは、要するに漢字を組み合わせた熟語で、もとは中国語であったものが日本に入ってきた言葉と説明されることが多いが、日本起源の漢語もたくさんある。
特に明治期になって西洋の学問が入ってきたときに、福沢諭吉らは
日本語になかった西洋の概念を次々と日本語に翻訳(造語)していった。
中国の正式名称は「中華人民共和国」。このうち「人民」も「共和」も日本でつくられた言葉。
ついでに「共産主義」も日本でつくられ中国に渡った言葉である。
さて、「共和国」を名乗る国は多いが、改めて「共和国って何?」と問われて即答できる人はどのくらいいるのだろうか?
ウイキペディアで調べてみると、一言で説明すると「君主が存在しない国家」ということである。
ところが実は、共和国とは君主が存在しない国家であるという説明だけでは不足なのである。
去年(2014年)、共和国を名乗る出版社が東京に出来たからである。
よって共和国の説明は、
1.君主が存在しない国
2.東京にある出版社
としなければいけない。
共和国。わたしはよく知らない出版社なのであるが、既刊一覧を見るとなかなか面白そうな良質な本(読んでないのに良質と評価するのはおかしいな)を出しているではないか。
今回の記事(エントリー)で「韓寒」と「共和国」を強引に結びつけたのは、「共和国で韓寒出さない? ベストセラー欲しいでしょ? サンマーク以外まだ日本の出版社は手を付けてない今がチャンスですぜ」と言いたかったからである。
もちろんわたしが協力できるようなことは何もない。
※注1: ウイキペディアの記事に関して、「中国国内ではブロガーとしての人気も高い。政府や中国共産党の指導者、公務員などに対して痛烈な批判を展開しているが、民主化運動家などとは異なって正面切っての体制批判は避けているとも言われる」とあるが、「正面切っての体制批判」を避けるのはあたりまえじゃないかと思う。韓寒は民主化運動家ではなく作家である。「正面切って」ということをせずに、作家らしくアイロニー(皮肉)やメタファー(隠喩)をふんだんに使って「体制批判」をする文章だからこそ読者をひきつけるのである。
※注2:『上海ベイビー』の原題は『上海宝貝』。『上海ベイビー』は直訳である。『三重門』を『上海ビート』・・・ひどすぎる。
【補足】 中国の書店は立ち読みに寛大で、読書用の机と椅子が用意されているところが多い。ハード(物)を盗るのは犯罪だけど、物としての実体のないソフト(情報)をタダで手に入れることの何がいけないの? というわけで、中国人民は椅子に座り売り物である本をゆっくり読んだり、売り物である本と持参したノートを広げて勉強していたりして、書店なのに “ちょっとした図書館状態” である。
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