2012.05.02 Wednesday
中国、日常の茶と飯の事2 《革命的住宅編》
「破壊せよ、とアイラーは言った」と言ったのは中上健二であるが、「破壊なくして創造なし」と言ったのは毛沢東である。これに呼応して紅衛兵(※注1)は、中国の文化・伝統を破壊しまくった。後に荒廃と停滞が残った。
紅衛兵が姿を消した今、中国は新たな破壊と創造が進行中。
☆ ☆ ☆
私が今住んでいるのは31階建ての高層マンション。
日本にいるみんなは、まるで私が中国のヒルズ族になったとでも思っているようだ。
↑会社から私のマンションがある方向を望む。手前に古い団地が広がりその向こうに高層ビルが見える。今の中国を象徴的に表す光景だ。真ん中にある高層ビル(2層並んでいる奥のほう)が私の住んでいるマンション。
しかし、実態は家賃900元のワンルームマンションなのである。
家賃900元というのは、どうなのかというと、安い物件を中心に扱っているボロくて小さな不動産屋の店頭広告の中では高額なほうにはいるが、しっかりした店構えの不動産屋の広告の中では安いほうに入る。この手のマンションとしては濰坊では平均的な家賃ということだろう。
部屋はきれいである。でも、洗面所兼トイレ兼シャワールーム(兼洗濯機置き場)に当然浴槽はないし、工事の仕上げが雑なので、日本人の感覚からすると清潔感に欠ける。
キッチンも小さくて使いづらい。
高層ではあるが、けっして高級マンションではない。
↑私の部屋の中。広さは12畳ほどであろうか
それに、高層マンションの住人はストレスが多いというが実のその通りなのである。
見晴らしはいいが、地上で営まれている人間の日常と切り離されているという感じがつきまとう。
天上人は孤独である。
それに外に出る事がとても面倒だ。とにかくエレベータ無しでは生活できない。
朝の通勤時、なかなかエレベータが来ない時はかなりのストレスである。
ところが中国では、この高層マンションの暮らしが当たり前の生活になろうという事態が進行している。
中国の土地はすべて国有地である。
都市部の住民は、ふつうアパートやマンションの集合住宅に住む。
この集合住宅は「社区」とか「花園」「小区」といった単位でまとめられ団地を形成してる。
団地はどれも老朽化が激しく、近くで見るとまるでスラムの住宅のようである。
この団地をすべてぶっ壊し、高層マンションを中心とした町に作り変えるつもりらしい。
町のいたるところで大規模な工事が行われている。
建物を壊すというより、町ごと全部壊をこわす。
大阪なら、扇町公園くらいの広さの工事現場があちこちにあると想像してもらうとちょうどいいのかもしれない。毎日放送のある茶屋町を想像してはいけない。
日本のバブル期より、はるかにすさまじい規模の再開発だ。
とにかく壊す。更地にする。紅衛兵は人力でハンマーを持って壊したけど、今は重機なのだ。徹底的に壊す。
そして高層マンションが建てられる。破壊なくして創造なし。
元の住民は格安の家賃で新しいマンションに入居できるらしい。
別の場所に引っ越したいという住民は補償金が手に入る。
マンション物件をころころ転がしながらぶくぶく太っていくという共産主義者らしからぬ人(※注2)も結構いるらしいが、このあたりは資本主義・日本のバブル期と同じだ。
下のイラストはある工事現場の壁に描かれていた完成予想図。
こんな近未来的な感じの完成予想図が、どこの工事現場の壁にも描かれている。
文化大革命(※注3)ならぬ住宅大革命が進行中なのである。
これから、人口は減っていくし、企業は海外に進出するしか成長の望みはない。
バブル崩壊後、ずっとそんな閉塞感が日本中を覆っている。
中国に行ってみようと思った理由の一つに、中国の発展するエネルギーを自分の中に取り込みたいというのがあった。
でもねぇ・・・・・・
ただでさえ、中国の自殺者は毎年25万人を超えるそうだ。
そんな中国で、人と人の結びつきの希薄な高層マンションが次々と建てられている。
みんなが高層マンションに住むようになったとき、中国の人々は幸せになっているのだろうかと思う。
余計なお世話だけど。
以上、第二の文化大革命が進行中の中国からの報告でした。
↑工事現場の中に残る古い民家。土地の明け渡しに抵抗でもしているのだろうか? まだ人が住んでいた。
※注1・3: 紅衛兵とは60年代後半に現れた中国のパンク・キッズたちのこと。70年代後半に出現したロンドンのパンク・キッズはギターを持って「アナーキー(anarchy)」と叫び唾を吐きまくっていたが、紅衛兵たちは毛沢東語録を持って「造反有理」と叫び中国の伝統を壊しまくった。孔子の人形を鉄砲で撃つ(※注4)という無邪気な遊びもあったようだ。中国全土を席巻した紅衛兵ムーブメントを文化大革命という。
※注2: 中国国民として中国本土(「中国本土」と言った場合は香港とマカオ、それとあくまでも省であるところの台湾省を除いた中国と考えればいいだろう)に住んでいるという事は、必然的に共産主義者ということになる・・・筈だ。でないと××されて×××になったり、常に行動を××の××の下に置かれて××を××××××(自主検閲が多すぎて、意味不明)。
※注4: ウィキペディアの「文化大革命」には、「司馬遼太郎は当初文化大革命に肯定的であったが、中華人民共和国を訪れた際、子供に孔子に見立てた人形を破壊させる光景を目の当たりにし転向し反文化大革命、反中国共産党に転じることになる」とある。 (ん? この文章も「目の当たりにし転向し」と、助詞「て」を入れてませんね、同志Sさん)
※注の注: 注1・3のリンク先についてだが、こっち(中国)からだと、けっこう接続が遮断される。投げてはいけないところに投球が入っているらしい。私からすれば、ストライク決めまくりなのだけど、中国のサイバー警察からすれば暴投、危険球らしい。言論の「K点越え」と言ってもいいのかもしれない。日本からはどうですか? リンク先つながりますかぁ?
※注の注の注: あんまりつながらないのも何なので、リンク張りなおしたよ。まったく、もう。なお、注1・3の内容は、私の文章もリンク先もいいかげんな記述が多いので、あまり信用しないように。
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