『中級から学ぶ日本語』『上級で学ぶ日本語』を読む

５月１日。日本はゴールデン・ウイーク真っ最中ですね。
こちら中国は労働節。３連休の最終日。
ふだんより人出が多いこと以外、特に町の様子に変わったことはない。


≪十笏園に行ってきました≫
３連休じゃあ遠出をする気にもなれない。かと言って、どこも行かなかったというのも何なので、昨日は十笏園（シー・フー・ユェン）に行ってまいりました。十笏園は凧の博物館とともに、濰坊の観光名所として筆頭に挙げられているところである。

十笏園は明の時代に建てられ、もとは明嘉靖年間の刑部郎中胡邦佐の旧居である。その名の由来は丁善宝の『十笏園記』によると「以其小而易就也，署其名曰十笏園，亦以其小而名之也」（※注１）とある。
そして、その庭園は中国の古典造園芸術の傑作として名高い。
うーむ、なんと歴史のあることか。
これだけの場所であれば、私の十笏園訪問記は、きっと現代の『古寺巡礼』（和辻哲郎）とも言うべき格調高い紀行記になるに違いない。
いやがおうにも期待で盛り上がる。


十笏園は全然遠くなくて、歩いて行ける距離にある。しかし、入口が分かりにくい。
やっと見つけた狭い路地を進む。道の片側には土産物屋が軒を並べている。
いやがおうにも期待でますます盛り上がる。

ここが入り口かぁ。入場料４０元。

入場料の４０元はちょっと高いような気がするが、４０元取らないとつり合わないくらいの価値がある名庭と古建築群がこの中に存在しているということであろう。
いやがおうにも期待・・・爆発寸前。

４０元払って中に入った。
道が狭い。
迷路のようだ。

建物がたくさんある。
どの建物も小さい。
中国らしからぬスケールの小ささだ。
しかし、この中に芸術的価値の高い書などが展示されているらしい。知的好奇心がくすぐられるではないか。
建物の中に一つひとつ入ってみた。

展示物はというと、中国の書などに対して深い造詣があれば、腕組みなんぞして展示物の一つひとつを見ながら「うーむ」などと深くうなずき、中国の悠久の歴史に思いをはせつつ深遠なる中国文化を深く考察するのであろう。
しかし、私はそのようなことに関してまったくのidiot（※２）であった。
和辻哲郎どころではない。
腕をだらんと下げたまま建物内部を見渡し終えると、そそくさと次の建物へと向かった。


と、間もなく庭園へと出た。

うっ、これが・・・。

小さい。

上海の豫園に行ったことがあるけど、この１００倍くらいのスケールだった。

それに、庭自体の美しさも・・・中国を代表する名庭園・・・・・・中国の古典造園芸術の傑作・・・・・・・・・と言うから・・・・・・・・・・・・・わざわざ・・・・・・・・・・・来たのに。

爆発寸前だった、あの期待は・・・。
なぜか、なぜかわからないが、しおしおのぱー（※注３）という言葉が頭の中に浮かんだ。

観光客はみんな写真を撮っている。私も写真を撮った。




もう私の頭の中に『古寺巡礼』はなかった。
４０元も惜しくはなかった。
もういい・・・。帰ろう。帰してください。


シンガポール（※注４）にマーライオンというのがある。
小さい。
口から水を吐いているだけで芸がない。
あまり欲しくないとは思うが、「世界がっかり名所」の名を欲しいままにしている。
和辻哲郎が去った後の私の頭の中には、そんな不憫なマーライオンの姿がずっと浮かんでいた。そして思った。

「マーライオンの勝ちだな」


注１： 「小さいので十笏園にした」というような意味である。丁善宝は清時代の十笏園の所有者。刑部郎中胡邦佐とかはよくわからん。
注２： 「白」で始まるドストエフスキーで有名な言葉を入れようとしたのだけど、変換しても出てこないので調べたら差別語だったのね。知らなかった。
注３： 何かと思ったら、快獣ブースカが話すブースカ語だった。
注４： 私は行ったことがないが、有名な超管理国家。悪い国じゃないと思うけど、ここに行ったバックパッカーからは「屋台もなく、街がきれいすぎる。何もすることがなくて退屈」という声をよく聞いた。