2015.05.16 Saturday
中国の誕生日 〜 出生をめぐるあれこれ 1
中国って、町を歩いていると、意外な場所に何気に、本当に意外な場所に何気にコンドームの自動販売機があったりする。
日本でも見かけることあるけど、日本は普通、薬局・薬店の店頭だよね。
それと、やたら大人のおもちゃ(成人用品)の店がたくさんあって、表通りでも、駅前の地下街でも堂々と営業してるし、店内では小学生の子供が机に座って宿題をしていたりする。
よくあんな下品きわまりない店内(濰坊にはブティック風のスタイリッシュなレイアウトの店があった)で平常心を保って宿題ができるものだ。
ぐれないか?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あげます」「もらいます」の授業をした。
これ、中国人や英語圏の人にとって、それに対応する単語がないので注意がいる。
「あげます」「もらいます」の表現は、英語では動詞“give”を使って give you、give him(her)、give me のようになる。
同様に、中国語では動詞“給”を使い、給他、給我のようになる。
また、中国人の書いた教科書には、「(プレゼントを)あげます」を「(プレゼントを)上げます」と、漢字「上」を使って表記しているものがあって、たいへんに嫌だ。
上への移動なら「上げます」でいいが、「与える」の意味で使う場合はひらがなで「あげます」の表記が適切だ。
漢字表記にきわめて鈍感で、「常用漢字表」(内閣告示)の存在も知らず、たくさん漢字を使えば教養を示すことができると勘違いして、なんでも漢字に変換する日本語教師LIFEセンセーは気にしないだろうけど。
「あげます」と「やります」の使い分けも要注意である。
最近は「犬に餌をあげます」のような表現が普通に使われるようになって、分けわからんのであるが。
さらに、敬語の「さしあげます」「いただきます」「くださいます」とかも加わると、学習者にとって、使い分けがひどく難しい。
もっとも一気に教えたりしないけど。
話を戻す。
学生に誕生日をきいた。
誕生日をきいたあと、「あなたは誕生日に何をもらいましたか?」という質問をして、「○○をもらいました」という答えを言わせようとしたのである。
すると、学生から意味不明な質問が出た。
「先生、日本人は誕生日は二つありますか?」
あるわけがない。人間、この世に生まれるのは一回こっきりだ。
俺は生まれ変わった! というのは比喩表現に過ぎないし、「わたしはブッダの生まれ変わりです」と大真面目に言うイタコ芸人(※注1)も、わたしは相手にしないことにしている。
「ありません。誕生日は一つです」
「中国は誕生日が二つあります」
「・・・・・・・」
動かなくなったわたしのほうを見て、その学生は中国語で「阴历」(陰暦)とノートに書いてわたしに見せた。
陰暦・・・、一気に疑問が解けた。
中国人は、新年を太陽暦ではなく旧暦(陰暦)の春節で祝うのと同様に、誕生日も旧暦でも祝う。だから誕生日が二つある!
その学生は、
「誕生日プレゼントをもらったりするのは、旧暦の誕生日の時で、新暦の誕生日の日は何もしない」と言う。
ということは、新暦の誕生日の日に「お誕生日おめでとう!」なんてやると、ちょっと間抜けなことになる。実際に、その体験を書いているブログの記事(中国人の誕生日は「今年は○月頃です」)もあった。
あとで中国人の先生に確認すると、
・中国人は新暦と旧暦の二つの誕生日を持つ。
・新暦と旧暦にはずれがあるから、旧暦の誕生日の日は春節同様に毎年変わる。
・二つの誕生日をどう祝う(使い分ける)かは、年歴層、地域、家庭、個人によって違う。
・お年寄りは旧暦の誕生日を大切にする人が多いが、若い人はそうではないことが多い。
・中国の北方は一般に新暦の誕生日を重視し旧暦の誕生日は無視する人もいるが、古い習慣の残る南方は旧暦を重視する人も多い。
誕生日を学生に質問したとき、彼ら・彼女らが答える誕生日はたぶん新暦の誕生日だろう。
日本は島国で、他国に征服されたり植民地の経験がないから外来の文明や文化を取り入れることに躊躇しない。
悪く言えば、押し付けられなくても自ら進んで強国の植民地化の道を進む。
だから、暦も太陰暦を捨てて欧米の太陽歴に切り替えた。
しかし、中国はいまだに、太陰暦を大切にする。
これって、中華社会が西洋文明にすっかり飲み込まれないようにするための自己防衛であり、中華社会が中華社会であることのアイデンティティ証明なんだろな。
「わたしは新暦の誕生日だけを祝います。でも、妻は二回とも祝いますから、わたしは大変です」とその中国人先生。
中国では女性は強い。中国のバレンタイン(情人節)は日本とは逆で、男性が女性にプレゼントやバラの花を贈る。
町ゆくカップルを見ても、男が女の子をおんぶしたり、スーパーでは店内の買い物用カートの中に女の子を入れて(!)、男がそのカートを押している。
涙ぐましいまでにバカ丸出しのご奉仕ぶり。
中国は、計画生育政策(※注2)のために男女の構成比がかなり偏っており、結婚できない男は多い。
結婚できても、妻となった女性は恋人同士時代以上に、まあ日本も同じようなものだけど、その女性上位パワーをどんどん増す。
だから、妻の誕生日を2回祝ってあげないといけなかったりして、男の受難は続く。
すべての男は消耗品である(※注3)。
いや、ほとんどの男は粗末にせず大切に使うと、消耗品として粗大ごみになることなく一生使えるんじゃないか?
たぶん・・・。
わたしは自信ないけど。
※注1: このブログに信者さんがいたらごめんなさい。悪気は少ししかありません。コメントくれたら素直に謝ります。
※注2: 計画生育政策とは、いわゆる「一人っ子政策」のこと。一人っ子政策については、あまりに誤解が多いので、次回書く。
※注3:『すべての男は消耗品である』 村上龍 著 (集英社文庫)。読んだけど何も印象に残ってない。
【追 記】 わたしが唯一、最初から最後まで中国語で歌える歌が「生日歌儿」。HAPPY BIRTHDAY TO YOUの中国語版で、歌詞は「祝您生日快乐」だけだから、誰でもすぐに覚えられるよ(動画:リンク)。リンク先の曲婉婷は、とても有名なシンガー。欧米でもCDが発売されているほどの実力者だ。
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