2015.09.02 Wednesday
笈川幸司先生でコメント欄が思わぬプチ盛り上がり
笈川幸司先生。いやあ,中国で日本語を教えている(教えていた)先生,けっこうみんな気になっていたのですね。この先生のこと。
前回の記事「【中国】問題な日本語学科 〜 学校にもいろいろある」は,笈川幸司先生でコメント欄が思わぬプチ盛り上がり。
そして記事自体は知らぬ間に、にほんブログ村の日本語教育の注目記事ランキングでえらく上位にランクインしてしまっている。
いや,そんな注目されるような大したこと書いてないけど。しっかりと教授法だの文法だの外国にルーツを持つ子供たちの就学支援(わたし,外国にルーツを持つ子供たちの学習支援ボランティアをやってたことがある)だのといった記事を書いておられる方に申し訳ない。
まあ,こういう与太話のほうが面白がられるのだと・・・。
さて,本題に入る前に,及川先生の略歴はウィキペディアで見てくだされ。ほれ,リンクはここだ。
おお,こっちも面白そうだぞ。新華通信社の「日本語航海士の中国旅情!」。
日本語航海士、演説家というすっかりイッちゃてる肩書が素敵だ。内容は、及川先生自身による「毎回びっくりするようなエピソードをもとに、真理を求めて行」く,熱いブログだ。
ごめんなさい。わたし「真理」なる言葉をふりまわす人(党,組織を含む)は信用できないんです。
及川先生は日本語講師養成講座420時間を修了したわけでも,日本語教育能力検定試験に合格しているわけでもない。
ようするに「無資格」(※注1)。
中国人女性と結婚して,北京にやってきて,知人の紹介で日本語学校の面接を受けたのが,日本語教師のキャリアのスタートである。
「中国の採用面接って,すごくおおらかなんですよ。最初にお茶を出してくれて」
そして,しばらくお茶の話,それからお菓子の話が続いたらしい。
「そんな具合で雑談ばかりして,最後は『そろそろ出掛けるから,契約書にサインして,明日から来てください』って(笑)」(及川先生の話。『月刊日本語』2011年12月号から引用)
いや,どこの学校もこんなおおらかな面接じゃあないって。ちゃんとシビアな話だって出る。
知人の紹介と言うことだから,中国の十八番(おはこ)であるコネで採用されたのだろう。別に悪いことじゃないけど。
さて,カリスマ日本語教師・笈川幸司先生について,まず海南島さんのコメントから。
「笈川先生、そうなんだぁ。海南師範大学には、この先生に心酔している学生がいて、卒業論文にまで書いてきました。」
「笈川先生の講座は、夏季に(冬季にも?)集中講義を募集します。個人での参加は不可で、必ずグループを作って申し込むようにというのがネックです。さて……心酔者はいる、しかしその実態は……ということで、私は卒業生が書いた論文を見てみたくなりました」
次はKAMOMEさんのコメント。“内容がないよう”というおやじギャグが・・・。
「笈川先生は、勤務していた師範大学で講演に来て、学生には大受けだったようです。用事があって聞けなかったのですが、同僚の外教や会話練習に部屋に来た学生たちに感想を聞いてみました。
“これが本当の大学の勉強だ”とQQで絶賛した学生がいた反面、ほとんどの学生は、“聞いているときはとても面白かったですが、後になってみると、何も思い出せません”というものでした。
ちなみに同僚は“内容がないよう”とバッサリ。。。」
ずいぶん前にH先生から,及川先生に関してちょっと長いメールをもらった。メールボックスを探して,そのメールを見つけ出した。以下、☆ から ☆ はそのメールからの引用。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
この前、彼の夏季講習に参加した学生が,
「すばらしかったので、この内容で私が特別授業を開講します。参加してください。」
というので,そもそも、学校に2人いる日本人教師を差し置いて「笈川先生のすばらしい授業」なるものをやることが気に入らなかったんだけど言いたいことをこらえて行ってみました。
発音練習、朗読(アクセントは笈川小楽譜なる発音記号がまず初耳なんだけど)、を終えたら会話例を読み、「自分の答えを1分考えた後、パートナー見つけて握手しながら会話」という妙なレクリエーション開始。
さっそく1年生が「できない!」と私に言ってきたんでこっそり中国語で文型説明して答え方教えて、できないところはやんなくていいからってフォロー。
全体的に握手してないし、指定会話に専念してないしで主催者が説教しだす始末。
「1年生は速すぎる、4年生は遅すぎるって言って2回目から来なくなりました、どうしよう。」
っていうから
「1年生は速いんじゃなくて、まだ知らないんだよ、あの課題の単語も文法も。」
「彼らはテキストの平仮名読んでればいいのに・・」
「いや、それじゃあ・・・・・(あえてコメントしなかった)」
レクリエーションはこなせた2年生は、別の課題、「じゅげむじゅげむ」の暗誦中にこっそり
「この講座、参加してメリットあるんでしょうか?」
と聞いてくるから、声を出すことが大事なんじゃない?とフォロー。
しかし、端折ったとはいえピックアップしたものはうーーん、楽しんでた子はいないんだけどなぁ・・・
やはり参加者のレベルが揃ってこその盛り上がり、私らは「覚えらんな〜い」と嘆く子達を相手にしているわけですもん。
主催者の学生が勘違いしたように無条件に優れたプログラムでもない、というのが感想。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
いかがだったでしょうか。
寿限無の暗誦ねぇ・・・。
KAMOMEさんが報告してくれた,及川先生の講演を聞いたほとんどの学生のコメント,
「聞いているときはとても面白かったですが、後になってみると、何も思い出せません」
というのが,この先生の魅力というか,その指導の中身を象徴した意見ではないか。
やっぱり,及川先生,お笑いの現場で鍛えた話術と自己演出力(話術と自己演出力,いずれも優秀な教師として重要な資質だ。わたしには? ない),北京大学,精華大学という,中国1,2位の超名門校で教えたというラッキーが,この先生をカリスマ日本語教師にしたのではないかと思っている。
優秀な児童・生徒・学生は自学自習できるから,先生がアホでも,教材を与えておいたら自ら学んでどんどん賢くなる。
わたしのようなアホでも,進学塾で教えていた時は、誰がどう考えてもわたしよりずっと頭がいい灘・甲陽受験クラスの子供たちを教えていたこともあるからよくわかる。
だいたい,「優れた大先生」の出前授業と言うのは,大先生という前評判の暗示(プラセボ,プラシーボ)効果,マレビト(非日常の客人)の効果もあって受けるもんなんだよ。
H先生が言うように「無条件に優れたプログラムでもない」ということは,やはり及川先生のやっていることは,及川先生の授業の魅力は及川自身の話術によるところが大きいのだろう。
だから,他人(学生)がそれを再現しようとしてもうまくいかない。
他人には真似のできない,つまりほかの先生ができない普遍性のない教育方法は,この先生をカリスマ日本語教師にしても,日本語教育の権威には決してしない。
もっと普遍的なやり方を開発して広めてもらいたいな。向山洋一(※注2)じゃないけど。
まあ,半分やっかみで言っているんだけどね。
話術と人柄は大変魅力があるのだろう。
繰り返しになるけど,話術と自己演出力は,いずれも人気教師になるには重要な資質だ。誰でも,好きな先生の教科はがんばって勉強したという思い出があるでしょ?
今やすっかりタレント業が板についている林修先生を見よ!
わたしも及川センセーみたいにカリスマと呼ばれたい!
※注1: もっとも,そもそも日本語教師に資格はいらない。日本語教育能力検定試験も資格試験ではないから,無資格であることは問題にはならない。でも実際には国内でも海外でも就業に当たって,あるいはビザの取得のために「養成講座420時間修了」か「日本語能力検定試験合格」を要求されることが多い。
※注2: 一部の教師からは教祖様的に祀り上げられている大先生。授業で成功した事例を集めて教師全員でそれを共有しようという「教育技術の法則化」という考え自体はわたしは評価していいと思っている。
ただわたしから見ると,お山の大将じゃないと気がすまずハッタリも多い向山先生の組織の私物化がひどいとか,向山先生の崇拝者には科学に弱い先生が多くて指導がオカルトな方向へ行ったり,かつては小森先生(原発推進さえしなければ優秀な先生であったと思う)を中心に学校現場で原発推進を積極的にやってたり,安倍晋三の応援をもらって喜んでたり,どんどん「?」な方向へ行ってしまっている。
話のついでに、東アフリカ・ルオ族の伝統楽器 "ニャティティ"奏者として知られている(知られてないか)アニャンゴさんは,向山先生の娘である。
【おまけ1】
わたしが目を通したことがある及川先生の書いたテキスト『及川日語発音教科書』。
例えば
・坂本龍馬
・坂本龍馬が好きです
・坂本龍馬に会いたいです
のような短かいフレーズの発音練習が最初から最後まで続く。
はあ?
【おまけ2】
久しぶりに日本語教師LIFEセンセー改め外教生活センセーのブログを開いてみた。抗日戦勝利70年記念式典について触れている。
「それにしても、中国が日本に勝利した、などと明らかな嘘を国家の祭典にしてしまうところが当局の当局らしいところですね」だって。
中国が日本に勝利した、などと明らかな嘘。
はあ?
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