2015.07.08 Wednesday
カルフールは中国語で家楽福。ジャラフーなのだ
中国語ではカナダ(Canada 加拿大)は「ジャナダ」、キャノン(Canon 佳能)は「ジャノン」のような発音(日本人の耳にはそう聞こえる)になる。
なぜ「ca」音が「チャ」や「ジャ」になるのか。
(1)(2)は関係者さんの説明。
(1)音訳した当時、これらの漢字はまだ「カ」音やったから、すんなり採用できた。参考までに、古くして朝鮮や日本に入ったこれらの漢字の音読みは「カ」系である。その後、北方語(北京語など)で口蓋化が進み、本家では「チャ」、「ジャ」系になった。
(2)音訳した当時、中国の政治・文化の中心は華中やった。ミショナリー系の西洋人も、だいたい華中・華南が守備範囲やったから、そっち方面の発音を持った漢字を採用した。
「カーフェイ」や「ガーリー」が「チャーフェイ」や「ジャーリー」にならんのは、口蓋化終了後に音訳したため、新たに「カ」系音を持つ漢字を使うたからやろな。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
関係者さんの説明する(1)(2)について、わたしの乏しい知識でちょっとだけ考えてみた。
中国語の発音(漢字の発音)については、漢字は時代によって発音が変化しているものがあること以外に、中国語は地方による発音の違いが大変大きい。方言なんて生易しいものではなく、実は全くの別の言語なのである。
そんなわけで、私のような中国語初学者は全然出る幕ではないのだけど。
カナダを中国語で書くと加拿大(jia na da)で、キャノンは佳能(jia neng)となる。
日本語の音読みでは「カ」である「加」「佳」が、いずれも現代の中国語(普通話)ではjiaという発音になっている。
日本の漢字の音読みというのは、中国の昔の発音を今に残しているものが多い。「家」も日本語の音読みに「カ」があるが、現代の中国語ではjiaと発音する。
加・家・佳はいずれも、昔の中国のある地方では「ジャ(jia)」ではなく、「カ」のような発音だったのだろう。
(2)のミショナリー系の西洋人も、だいたい華中・華南が守備範囲やったというのは、欧米の茶の発音がcha系ではなくte系であるところにも表れている。
「茶」の発音は中国語(普通話)でもチャー(cha)である。
中国語の茶の発音は,方言にによってcha系とte系に大きく大別される。
英語の茶はteaでティー。これは主に欧米へ茶を輸出していた福建省の茶の発音がte系の発音なのである。
ところで、CANADAは日本語ではカナダなんて発音しているけど、英語のCANADAはキャナダのような発音だから、英語圏の人が聞いたら中国語のジャナダーのほうがまだCANADAに近く聞こえているかもしれないとも思う。
McDonald's(メッダーノウズ、ミッダーノウズ)を、日本語でマクドナルドとしたのは藤田商店の藤田田。
「マクドナルド。どや、日本人に親しみやすい発音やろ」と何かの本で藤田田が言っていた。もっとも関西弁じゃなかったけど。
そんで調子に乗って「日本人もマクドナルドのハンバーガーを食べ続ければ、アメリカ人のようなブロンドの髪と青い瞳の人種になる」と言っていた。
さすがに、ここまでデタラメを言われると非難する気にもならない。異人さんに連れられて行っちゃった、赤い靴はいてた女の子じゃないんだから。
アメリカ人がブロンドの髪と青い瞳というのもなんだし。
マクドナルドは中国語では麦当劳(maidanglao)で発音はマイダンラオのような感じになる。
マクドナルドもマイダンラオも、いずれも英語圏の人にはまったく意味不明であることは間違いない。
北京放送の高橋さんが「日本から来た友人に“中国にはバクトウロウがたくさんあるね”と言われて、最初は何のことか分からなかった」と言っていた。
中国語の麦当劳をバクトウロウと読まれては、在中国の日本人には何のことか分からない。中国語でマイダンラオと言うか、素直にマクドナルドと言え。
これと似たようなことはたくさんある。
上海のホトウと言われて、何のことか分かる在中国の日本人は少ないのではないか。
わたし、初めて聞いたとき分からなかった。上海の浦東は、ホトウではなくプートンと言って欲しい。
日本人の利用が多い深圳の粤海酒店は『地球の歩き方』で「えつかいホテル」と振り仮名をふっていた。
深圳在住の日本人はみな粤海は、日本語の音読みではなく中国語の発音に近い「ユエハイ(ホテル)」と呼んでいる。「えつかい(ホテル)」では深圳在住の日本人にはちょっと通じにくいだろう。
その他、地名も(深圳では)深圳在住日本人は「福田(区)」はフーテン、「南山(区)」はナンシャンと中国語の発音に近い言い方をしている。
ふだからフクダとかナンザンとか言われると一瞬戸惑うのみならず、「ふ、ふ、ふくだだって・・・ぷっ」と吹きだしそうになる。
さて、カルフールがなぜ中国語で家楽福(ジャラフー)になるのか。
これ、わたしは関係者さんの言う「他のもんに合わしたか、どうしても“家”の字を使いたかったんかな」というのは、かなり正しいのではないかと思っている。
わたしは、日本語教師であるから、もちろん世界中の言語に通じている。
だが、残念ながら英語と中国語とフランス語だけは苦手なので、Carrefourはフランス語でどう発音するか知らない。
でも、家に楽に福である。中国人大好きな漢字3つの組み合わせだ。
濰坊のあちこちにある「佳楽家」、深圳に住んでいた時一番近かった「人人楽」など、地元資本のスーパーの名前もこの3つの漢字のどれかが入っていることが多い。
家楽福で「ジャラフー」というのは、中国人の耳に聞こえるフランス語の(あるいは英語の)Carrefourにかなり近いのであろう。
Carrefourが家楽福。意味よし、発音よしではないか。
発音と意味が一致したコカ・コーラの「可口可楽」、ミニスカートの「迷你裙」(裙 [qun] はスカートのこと。迷你の発音はミィニィ。あなたを迷わすスカートという意味になる)と共にとてもいい訳ではないかと思うのである。
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ブログを見るのを楽しみにしています☆
これからも楽しく読ませて頂きますね!
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オモロイこと言うたろか。台湾に高雄ゆうとこあるやろ。わし、あるブログで、「タカオ、タカオ言わんとちゃんと現地読みでカオシウン言うたれ」言うたんや。ほんだら早速反論食ろたわ。曰く、カオシウンゆう発音は、外省人があとから北京語で読んだもんや、本来の台湾語(ホーロー語、閩南語)では打狗(ターカウ)言うたし、それは原住民言語の発音を写したもんやった、その漢字を台湾総督府(つまり日本)が高雄に変えたんや、せやから現地音としてはタカオでええんや、みたいな話やった。なんでも、聞いてみな分からんもんやなあ。
せやけど、ボンベイをムンバイにする国があるかと思うとグルジアをジョージアにする国があったりして、訳わからんわ。
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新疆ウイグルじゃなくてトルキスタンだとか、尖閣諸島じゃなくて釣魚島というのもありますな。歴史の教科書なんか,百済が「くだら」だったり「ひゃくさい」になったりして訳わからなかったですが。
わたしは,中国の固有名詞は中国語の発音に合わせよ論者なんです。
済南は「さいなん」ではなくジーナン,重慶は「じゅうけい」ではなくチョンキンにせよ(実際,高校で使われている地図帳はそう表記している)、習金平はシーチンピンにせよ(実際,朝日新聞はそう振り仮名をつけている)と思っている。
高雄も歴史的にはそうであっても(オモロイ話ではあるけど)、実際今は北京語読みでカオシュンと言っているし、英語でもKaohsiungなんだから,高雄はやっぱりカオシュンでしょう。
そう、わたしは思う。
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北京語に合わせるんやったら、チョンキンやのうてチョンチンや。とゆうふうに、どの地方、どの時代の発音を捉えるんかで、ちごてくるで。
高雄の場合は、政治的立場でもちごてくる。今の台湾の事実上の標準語に乗っとるんやったら、カオシウンや。しかし、外省人は少数者による支配階級やから民衆の側に立て、ゆうことになると、台湾語の発音になるやろな。どや、偉いやろ。…せやけど、台湾語知らんしなあ。どうしよう…。トホホ。
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中国語も、北京語とか広東語とか、全然違うらしいですね。
自治区の方もそれぞれなのでしょうけど。
勉強するならやっぱり北京語?
発音もですけど、イントネーションが難しそうですね。
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東京書籍の『新しい社会科地図』で確かめました。重慶はチョンチンでした。
台湾に関しては、歴史的・政治的なこと考えると、わたしの知識では整理がつかなくなるから課題から逃亡。どや、卑怯者やろ。
ところで,美容室 美容院様は自分のHPへ誘導するためのオトリのコメントだと思って無視を決めこんでたのですが、ちゃんと読んでくれているんですね。失礼しました。
もちろん、勉強するなら北京語でっせ。半端に広東語覚えても、香港と広東省の一部の地域と一部の海外のチャイナ・タウンにしか使えへんで〜。
それでは、再見(サイチェンとふりがなを付けているのをよく見かけるけど、ザイジェンが中国語の実際の発音に近い。わたしが実際に耳にした範囲ではね。そして、日本語の「さようなら」と中国語の「再見」の適用範囲はぴたり一致しているわけじゃないから、日本語の「さようなら」ほど「再見」ってあまり中国人使ってないよ。わたしが実際に耳にした範囲ではね)。
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