2015.01.07 Wednesday
天国と地獄・考試採点編 〜 一気に脱力しますた
以下、怒りにまかせて一気に書くぞ!
今日から私の授業でも試験。
今日は2年生と3年生の試験をやった。
わたし、3年生は「日語写作」といって作文の授業を持たされているので、試験問題も作文である。
試験問題は以下の通り。
【問 題】 次の3つのテーマの中から テーマを一つ選んで、作文を書いてください。作文は400字以上書いてください。
(1)「わたしの家族」
あなたの家族を 日本人に紹介する作文を書いてください。
(2)「わたしの好きなこと」
あなたの趣味や好きなことを 日本人に紹介する作文を書いてください。
(3)「わたしの国、中国」
中国を 日本人に紹介する作文を書いてください。
3年生は、中国の職業技術学院では最高学年にあたる
実はこの3つのテーマは、濰坊の学校にいたとき日本語を習い始めてまだ2・3か月くらいの学生に宿題として与えていたテーマである。
作文のテーマとしてこれ以上平易にしようと思ったら、あとは自己紹介の作文くらいしかないくらい平易な問題にしたのだ。
というのも実はこの学校、学生の日本語力が恐ろしく低いのである(※注1)。
問題文の日本語は、初級の日本語を勉強し終えていたなら(理屈的には)誰でも理解できるレベルである。
なのに、試験問題を配り始めたそばから、問題文を中国語に翻訳して隣の席の子に教えている声が聞こえた。
「静かにしてください。請安静!」
日本語を習い始めて1、2か月の超初学者にするように、日本語に続けて、中国語で注意する。
そうしないと「静かにしてください」というごく初級の日本語さえ聞き取れない、意味がすぐに了解できない学生が多数いる。
商務日語(ビジネス日本語)科3年生の学生なのに・・・。
さて、作文の採点はたいへんなのである。作文の採点をやったことがない人でもこれは理解できるだろう。
そんなわけで試験を終えて、職員用食堂でくそ不味い昼食を済ませるとすぐにマンションに戻り採点を始めた。
採点を始めてみると、意外にも結構出来は悪くない。文法の誤りも少ないし。中には満点を与えようかと思うような実にすばらしいものもある。
わたしが彼らを教えたのはまだわずか2か月である。
それで、あのひどい日本語力だった彼ら・彼女らがこれほどの文章を書けるようになったとは・・・!
学生の努力もさることながら、このわたしの指導が彼らの日本語力を劇的にかえたのか?
わたしは上機嫌で採点作業を進めた。
第二の笈川幸司(※注2)、常州に現る!
「常州の奇跡」として、日本語教師である私の名が中国全土に知れ渡るのはもはや時間の問題かと思われた。
うーんこの作文もよく書けているけど、さっき同じ文章を読んだような・・・。
おっ、これも、これも、さっき読んだ作文と同じだぞ。
33枚中11枚同じ内容の作文が出てきた。
一気に脱力しますた。
文法の誤りをちょっと手直ししてどこかの作文コンクールに出したいと思うほど出来のいい作文が2つあったけど、とても気になってきた。
「ん? 東京? 留学? そんな子いたか?」
作文の一部を入力してインターネットで検索をかけてみる。
ビンゴ! みごとにヒット。
中国作文网 日语作文我的兴趣
(中国作文ネット 日本語作文 私の趣味)
そこには一字一句違わぬ作文があった。
ここまでで33枚中13枚の不正発見。
さらに、起承転結の「起」の部分が「わたしはたくさんの趣味を持ています。旅行が一番好きです。旅行を通じて地元の文化を勉強すると思います」。
「結」の部分が「たくさんの趣味を育てましたから、わたしの生活が素晴らしくなりました」(日本語の誤りはママ)と、「起」と「結」の部分が日本語の誤りを含め一致する作文が3枚。
これで33枚中不正は16枚。
約50パーセントの答案に不正を発見。
さらに「です・ます」調で書き始めた下手な日本語で内容も稚拙な作文が、急に「だ・である」と文体が変化するとともに文章の内容が大学生らしくなり、かつ文法の誤りがなくなるという、不正の疑いが濃厚であるが、不正の証拠がつかめない作文が4枚。
以上、作文の答案33枚中、容疑を含めて不正は20枚。
まだ出てきそうだ。
もちろん試験中は教室で机間巡視していたけど甘かった。
もっとも日本だって、わたしも学生時代はカンニングしてたし、ネットが普及してからは学生のレポートはネットからのコピペが氾濫していると聞く。
そういえば編集者時代、著者の先生にもらった原稿。念のためネットで検索かけてみたら、原稿のほとんどがネットからのコピぺということもあった。
現役の学校の先生でもこういうことをする。
でもねえ、作文の試験でカンニング、他人の文章を丸写しするなどという不正をはたらくなんて、20年近くセンセーと呼ばれる仕事をしてきたけど、まったく予想していなかったし初の経験だよ。だって、作文は10人が書けば10通りの違った答えが出てくるわけで、それが一つのテストで複数同じ文章が書かれた作文があれば不正はばればれなんだから、そんなすぐ不正がばれるようなことはしないものだと思い込んでいた。
しかし、採点どうしようかな。採点基準は思いっきり甘くして、作文の条件であるテーマを一つ選ぶ、400字以上書くというのが守られて、日本語の誤りが多数あったとしても読んで内容が理解できれば合格点を与える方針は変わらないけど、明らかな他人の文章丸写しの作文に得点やるのは公平性を欠くし、教育的ではないからねぇ。
※注: 深圳で同僚だったH先生は、なんと奇遇にも今は濰坊(!)の大学で日本語を教えている。
こっちの学生の日本語力があまりに低いもんだから、年明けにH先生に「そっちはどう?」と尋ねてみたら、「同じく全然駄目ですね。全学年、何かしらの授業持ってましたが上級生でコミュニケーションとれるのが1割以下、他は授業そのものが聞き取れてません」という返事が来た。
町中の民間の日本語学校は、短期間で学生に実用的な日本語能力を身につけさせているのだから、これは大学の教育システム自体に重大な欠点があるということである。
※注2: ウィキペディアには「教え子である清華大学生が、北京市スピーチ大会で6大会連続優勝。北京大学生が、北京市日本語コンテスト5大会連続優勝」とあるが、清華大、北京大といえば、中国NO.1、NO.2の超名門大学なので、この先生でなくとも連続優勝の記録は打ち立てられたのではないかとも思う。またこの先生の著した日本語教科書も読んだが、どこがいいのか全然分からない。というわけで、ややうさん臭いのではあるが、中国ではカリスマとして知られる日本語教師。
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