2015.04.06 Monday
マイ・スウィート・ROAD 〜 道と交通安全の思想
わたし、中学校のころはジョージ・ハリスンの「My Sweet Load」を「My Sweet Road」だと思っていた(ような気がする)。
「マイ・スウィート・ロード」は道路(road)じゃなくて神様(lord)だよ。
事故ったBRT(高速バス)の接触事故に遭遇という貴重な、いや中国では接触事故しばしば見かけるので、ぜんぜん貴重ではないのだけど、ともかく、接触事故を起こしたバス(BRT)に乗り合わせるという体験をしたわたしは、中国と日本の道路の違いをアカデミックに考察することにした。
↑ 記念に(笑)持ち帰った、接触事故で破損したBRTの車体の破片
まず中国の道路はカオスなのである。
車と車がカオスだ。
二輪車が加わると、二輪車と車と車のカオスになる。
そして歩行者が加わると、歩行者と二輪車と車と車のカオスになる。
これに犬、猫、牛、ロバといった動物が加わると、犬、猫、牛、ロバと歩行者と二輪車と車と車のカオスになる。
これに楊貴妃(杨贵妃 Yang gui fei)のような美女が加わると、みんなが一斉に注目するのでカオスは即、事故へと帰結することになる。
なぜカオスになるのか?
道路を見ればすぐにわかる。
(1)車線がちゃんと分けられてない
とくに交差点がひどい。それまで、白線で車線が分けられていても交差点の中は、かなり怪しくなる。
怪しくなるだけならまだましで、白線が何もひかれてない交差点もときおりみかける。
交差点(十字路)とは、二つの道が交差するところであるが、4つの道が集まるところであるともいえる。
1つの道に注目してみよう。車の進行方向は3通りである。つまり、左折・直進・右折である。
ところが交差点は道が4つだから、交差点における車の進行方向の組み合わせは、
3通り×4=12通り
この12通りの車の流れを交差点内に白線でどのように分けるという、ムズカしいことになると「あとはよくわからないから、事故らないようにドライバーの皆さんよろしく」となって、交差点の中を知らんふりにしてしまう。
(2)信号が少ない
どうも信号は、最低限バスが通る道とバスが通る道が交差するところにあればいいという考えらしい。
けっこう交通量がある交差点なのに信号がないことも多い。
(3)道路標識が少ない
道路の名前を示す標識以外の、安全運転のための注意を促す道路標識がほとんどない。
↑ 交通標識。左から「ドラム式洗濯機注意」、「パパ、あれ買って」、「ブーメラン地帯」。詳細はリンク先参照のこと。
以上のように、道路そのものが日本と正反対なのである。
日本の道路は、主要な道路や交差点は、ひんぱんに交通量調査が行われ、そこで得たデータや過去の事故例を加味して、車をスムーズに流し、無用な事故を起こさない為の知恵を道路に投入している。
ところが、中国で一般庶民が自家用車を持てるようになったのは、改革開放の80年代から。モータリゼーションの歴史が非常に浅い。
だから、それぞれの道路で事故を起こさぬために、どのように車線を分け、信号はどこにどれだけ必要で、更に車をスムーズに流すためには、どのような時間とタイミングで「赤」と「青」を切り変えていくかとか、注意喚起の標識は何が必要かといったノウハウがまだ持てていないのである。
その結果、交通事故を起こさぬようにドライバーに求められることは次のようになる。
日本は「事故を起こさぬよう、道路上に示されたルールに従え。勝手に自己判断するな」。
中国は「事故を起こさぬよう、各自が周囲の状況に注意を払い、自己判断せよ」。
中国国際放送局のキャスターの中国人男性・王洋さん(何も知らされなければ、日本人かと思うくらい日本語が上手い)は、日本と中国の免許を持っている。
日本と中国の道路を比べて、日本の道路は非常に快適で走りやすい。日本から北京へ帰ると北京の道は怖いというようなことを言っていた。
日本の道路は、ドライバーに自己判断させないから車の流れに秩序ができる。ドライバーはその流れに身を任せればよい。
中国の道路は、ドライバー各自がそれぞれに自己判断を要求されるから、必然的に道路はカオスになる。
つまり、交通安全の「ルールは道路にある」のが日本で、「ルールは俺(運転手)にある」のが中国である。
ところで、国際免許を取る際に必然的に目にする言葉なので知っている人も多いと思うが、中国はジュネーブ条約(※注)に加盟してないため国際免許証がない(無効である)。
このブログでおなじみの日本語教師LIFEセンセーがこういうことを言っていた。
もし国際免許証を中国人が持つようになったら、(運転の荒い)中国人も日本でも車を運転するようになる。これは考えるだけでも恐ろしい。
何を言わせてもこのセンセーは思慮が浅いねぇ。頭の中の回路が異常に単純で短い。
ちっとも恐ろしくないよ。
日本の道路は、ちゃんとドライバーから自己判断を奪い、予定調和された秩序に従わざるを得ないようにできているんだよ。
実際、ときおりこの秩序に逆らって道路を走っているのは、サイレンを鳴らした緊急車両だけである。
それとは反対に、小日本のドライバーが大中国で車を運転することのほうがよっぽど危険だ。
なにせ、車を運転するのに自己判断したことのない人間が、中国の道路に出た途端、自己判断をしなくてはならないのだ。
まるでオオカミの群れの中の羊だ。
こっちのほうがずっと危ない。
※注: ジュネーブ条約は通称で、正しくは道路交通に関する条約。国外運転免許証が有効な国(ジュネーブ条約加盟国)は、警視庁のHPに分かり易い一覧がある。また、中国で車を運転したい人は在中国日本大使館の情報もどうぞ。古い情報(『初めての中国生活』日中通信社 2005年。この本は誤りや偏った情報が多い)なので今でもそうなのかどうか知らないが、中国の免許の試験は通訳の同行が認められている。不正やりたい放題じゃないのか?
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Comments
海南島です。ジュネーブ条約というものがあるということを知りませんでした。それに加入しないことにも理由があるんでしょうが、なんなんでしょうね。
車とバイクと人のカオス、毎日目にしておりますが、貴記事の12通りのカオスに加え、私は車線を逆走するバイクや三輪タクシーのカオスにも、日々戦慄しております。いずれにしてもこれからも色んな事を教えてください。
ジュネーブ条約、ちょっと勉強しよう。
Comments
ジュネーブ条約は、国際免許を取る際に必然的に目にする言葉なので、知っている人も多いはずです。ジュネーブ条約について加筆しておきました。
なぜ加入しないかはわかりませんが、日本も国際免許に関するもう一つの国際条約である「道路交通に関するウィーン条約」に加盟してないわけですから、特に中国が異常というわけではないような気がします。
たしかに三輪タクシーも、なかなかアナーキーな走り方してますね。
「これからも色んな事を教えてください」って、わたしも中国のこといろいろ知らないから、知らないこと・疑問に思ったことを調べて、分かったことを書いているだけでして、全部知識の受け売りですよ。
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